【スタッフ藤木のロードバイクサイエンス教室第一弾】クランク長の定説が覆る!?日本人に最適な新定義とは?

【スタッフ藤木のロードバイクサイエンス教室第一弾】クランク長の定説が覆る!?日本人に最適な新定義とは?

2019-11-26T15:53:46+00:00 2019/11/26|ニュース|

こんにちは、藤木です。

近年、運動生理学や科学の進歩によってスポーツの世界は凄まじい変化が日々起きていますよね。

    

これはロードバイクの世界でも同様です。今まで常識だと思われていたことが覆り、より速くより快適に走れるように人間も機材も進化を続けています。またそういった進化は一流のプロ選手だけに適応されるわけではなく、我々ホビーライダーに用いても効果的です。

ということで、皆様にもロードバイクを科学的観点から見て頂きより楽しく速く走って頂くため、「スタッフ藤木のロードバイクサイエンス」を開講します!!

第一弾はクランクについての講義です。それでは授業を始めましょう!


―クランクって何?―

クランクとは、自転車を駆動させるためのフロントギア(チェーンリング)を取り付けているパーツの事です。また各メーカーごとに、固定方式や主軸の太さが異なっています。クランクは大きいパーツであることに加え、ライダーのパワーを受け止める重要なパーツの一つです。交換する際は、軽量かつ剛性(硬さ)の高いものに換える事をお勧めします。

―クランクには長さがある―

クランクには異なった長さがラインナップされているのをご存知ですか?

クランク中心からペダル装着部中心まで(赤線)をクランクアームと呼びます。

アームの長さはmm(ミリ)で表記されており、2.5mm間隔で調整可能。長さが適切でないと膝を痛めたり、効率的なペダリングを行えません。

  

ちなみに自分が何mmのクランクを使っているのか知るのは簡単です。写真の様にクランクの裏側に表記されているのでチェックしてみて下さい。

―クランクと物理の法則―

本題に入る前に確認しておきたい事が、まず大前提として自転車を漕ぐ動作は円運動であるという事です。

この図が示していることは、回転軸からペダルまで長い方が力が掛かりやすく、大きなパワーを発揮できるという事。「てこの原理」と同じです。
また赤線は円周を示しています。長いと円運動が広く短いと円運動は小さくなります。
そのため長いクランクは筋肉や膝への負担が大きく、また柔軟性も必要となります。逆に短いとパワーが出せない反面、負担も少なく効率的な円運動を行いやすくなります。

結論:長いクランク=トルク重視のペダリング 短いクランク:ケイデンス(回転)重視のペダリング

―クランク長=身長の1/10―

さて自分に適切なクランク長の基準とは何でしょうか?一般的な定義として言われているのが、クランク長=身長の十分の一です。この定義を用いて、身長172㎝の私は172.5mmクランクを選んでいました。
ただし「1/10定義」の出どころは不明で、ハンドル幅の標準が400mmといった業界内の伝統的要素が強いように感じます。

―マイナス5mmが新常識?―

近年運動生理学や物理学の進歩により、クランク長=身長の1/10という定説が過去のものとなっています。特にトライアスロンやTT(タイムトライアル)では、「1/10定義」からマイナス5mmを使うプロ選手が増えてきました。

【マイナス5mmのメリット】

クランクを短くすることで、股関節の動きが小さくなります。そのためコンパクトで綺麗なペダリングが可能となります。また必要以上の股関節動作がセーブされるため身体への負担も少なく、効率性と快適性が両立されトータルパフォーマンス向上に繋がります。

【マイナス5mmのデメリット】

一般的な力学的視点から考えると、クランク長を短くすると大きいギアを回しにくくなり、約3%~4%の出力が低下すると言われています。
ですが近年、それらは短くするメリットによって相殺されることが分かっており、多くの場合「クランク長が短いとパワーが落ちる」という定説によるプラシーボ効果が強いとされています。

―東大卒プロライダーもクランク長は短め―

こちらの男性は2016年全日本選手権TTチャンピオンの元プロロードレーサー西薗良太氏です。西園氏は東京大学工学部卒のロジック派ライダーで知られています。中学生時代は陸上競技をしていましたが、故障で自転車競技に転向。この頃からすでに心拍トレーニングを取り入れ、高校・大学でも自転車競技を続け引退までパワーメーターを用いたサイエンティフィックな競技生活を送ってきた人物です。

そんな西園氏は前述したように、2016年の全日本選手権でTTチャンピオンの座を獲得。この時「40kmのTTで何秒削減できるか」を目的に、自転車競技場を借りて実験を行ったそうです。

西園氏はこの実験でポジションの見直しや空気抵抗を減らし出力を抑える他、クランク長を170mmから167.5mmへ変更。人間の脚は円運動に向いていないためショートクランクを用いて、小さく回す方が効率的かつ股関節角度を小さくすることにも繋がり、人によって異なる柔軟性への影響も少ないと西園氏は考えています。

―自らの肉体で検証―

これらの事実を基に、私もクランクを短くしました。

    

172.5mmから167.5mmへ変更。これは「1/10定義」からマイナス5mmを適応した長さとなります。

【クランクを短くするまでの経緯】

実は現役時代の無理がたたり、引退後に膝を悪くしていました。11月も調子が悪くスポール整形外科に通院。膝が痛い主な原因は私のフィジカル面ですが、機材面にも目を向けました。過去を振り返り考察した結果、2年前膝を痛めた時期にクランク長を170mm→172.5mmへ変更していたことが発覚。引退して筋力が落ちている中で、トルク重視の長いクランクに換えたことで膝に高負荷が掛かったのだと思います。

【使った感想】

使用して一番に感じたのは、ペダリングしやすいという事。逆に回しやすくなった半面、回転数は増すので違和感も覚えました。またギア比は変更しなかったのでアウターを踏み込むのに今まで以上にパワーを要する印象です。とはいえ3日目には慣れました。

短くした大きなメリットとして感じたのは、臀部の筋肉をしっかり使えることです。実際たった片道15kmの通勤で臀部の筋肉が痛くなりました。私の場合長いクランクを用いると、大腿四頭筋ばかり使う「踏み込むペダリング」になってしまい、大きな筋肉を使えていなかったということが分かりました。

―日本人とクランク長―

今回この記事を書くにあたって、色々調べ自分の体でも実際に体験しましたが短めのクランクは日本人に最適だと思います。

この結論に至るまで私はある仮説を立てました。それは日本人は西洋人に比べ、下肢が短いのではないかという事です。実際日本人と西洋人のプロロードレーサーを見比べてみましょう。

日本人選手(左:新城幸也 右:土井雪広)

 

※赤線:下肢(膝中央から踝)  緑線:上肢(膝中央から付け根まで)
新城選手は脛骨と大腿骨の長さが均等。土井選手はやや大腿骨が長いように見えます。

外国人選手(ブラッドリー・ウィギンス 英国)

分かりずらいですが、上肢に比べ下肢がやや長めです。

この写真を見れば一目瞭然。下肢の割合が大きいですよね。

もちろん全ての欧米選手を調べたわけではないので、これだけで判断するのは難しいですが欧米選手が長いクランクを用いる訳も頷けます。下肢が長いということは、小さい回転よりも大きな回転に向いているはず。そうなれば自ずと長いクランクを用いる事になるのです。

当然これを基準にすると、足の短い日本人は1/10定義からマイナス5mmを適応したクランクを用いるべきだと考えます。

※私個人の考えや体験を基に記述しています。また運動生理学の学習経験や資格等は所持しておりません。プロではなく素人による個人的見解です。


―講義のまとめ―

・クランクには異なる長さがラインナップされている。
・適切クランク長=身長の1/10はあくまでも目安。
・1/10定義からマイナス5mmを適用する価値は十分ある。
・短いクランクを使うことで、身体への低負荷と臀筋をはじめとする大きな筋肉をより使える。


いかがでしたか?ロードバイクの世界は皆様が思っている以上に奥深く探求し続ける価値があります。

今回短いクランクのメリットを発見出来たのも、これまでの経験や怪我への解決策を模索したから分かりました。フィジカル面・機材面でお困りの方はお気軽に藤木へご相談下さい。共にロードバイクを探求しましょう!

■ライター紹介

藤木 大貴(フジキダイキ)
スポーツ自転車歴12年。高校時代、クリテリウムのロードレースに参加。大学ではトライアスロン部所属。
在学中、デュアスロン(ラン10km→バイク40km→ラン5kmを行う競技)で世界選手権出場経験を持つ。
現在は、来年度競技復帰を目標に、日々練習中。

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奈良市、天理市、東大阪市のTREK(トレック)クロスバイク、ロードバイク専門店
バイシクルカラー奈良天理店 藤木 大貴
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